金色のアスリート

放送内容

2019.5.25 OA

坂井 聖人 競泳(バタフライ)

福岡県・柳川市出身の坂井聖人

当時21歳の大学生が金メダルまでわずか0秒04
次のオリンピックで狙うのはただひとつ

坂井「東京で金メダル」

金色に輝くメダルを目指す坂井。しかし…

坂井「焦る…」

東京では金メダル
残り1年、0秒04差を埋める
アスリートの姿に迫ります

スタッフ「ここによく来るんですか?」
坂井「よくきますね、お腹減ったらここっていう感じです一條」

地元・柳川、行きつけは大好きな焼き肉の店…
今や地元では知らない人がいない、ヒーローとなった坂井
しかし、その素顔は…

友達「柳川は訛りがひどいのになまっていないところですかね」
友達「いい人ぶってると思います」

福岡県柳川市出身の坂井選手は兄の影響で3歳の時に水泳を始めました。
中学3年生の時には、見事全国大会で優勝。

地元柳川高校に進学
数々のタイトルを手にしてきました。

体の大きな外国人選手と戦う坂井選手の凄さとは?潮田さんが迫りました。

潮田「坂井選手の武器?」
坂井「ぼく肩甲骨がめちゃくちゃ柔らかくて。そこを武器にしています」
潮田「みせてらってもいいですか?」
坂井「いいですよ」

肩甲骨の柔軟性。
そこに坂井選手が世界で戦うことができる秘密がありました。

潮田「すごいですよ!何かプリントとかはさめそう。すごい!ちょっとさわってもいいですか?すごい、本当にすごい、ヤバイヤバイヤバイ」

まるで生き物のように動く肩甲骨。さらに…

坂井「ここがすごいぼこってでるのでちょっとそれを見て頂ければ…」
潮田「えっ?えっ!今普通ですよね」
坂井「今普通でそこからのびるんですよ」
潮田「えっ大丈夫ですか?」
坂井「大丈夫です、全然痛くないです。より遠くの水がつかめるんですよ。腕の長さがここで伸びるので」
潮田「本当だ!」
坂井「だから右と左でこんなに違うので」
潮田「泳いでいる時にのばしているんですか?」
坂井「(水を)キャッチするときにのばしてキャッチしてます」

坂井選手は手を入水した時に持ち味の肩甲骨の柔軟性を生かして、腕を伸ばすことでより多くの水を捉えているといいます。
坂井選手独特の泳ぎを水中カメラで撮影してみました…

潮田「うぉー。すごーい。うぉー!うれしい。すごい美しい、本当にきれいでした」

もう一度潮田さんの撮影した水中映像を見てみると…
確かに入水した際に肩甲骨が少しでているように見えます
泳いでいる時も陸上で見せてもらった同じような形になっています。
その泳ぎで世界を驚かせたのは3年前のリオオリンピック。
男子200mバタフライ決勝。

大本命は水の怪物と呼ばれるスーパースターマイケルフェルプス。
坂井選手との身長差はなんと10センチ以上。

ラスト50m6番手でターンした坂井選手
ここからが最大の武器「肩の柔軟性」を生かした大きな泳ぎで世界を驚かせます。

金メダルのフェルプスとの差はわずか0秒04でした。
潮田「金メダルのマイケル・フェルプス選手と0.04秒差。0.04秒って実際にどれくらいの差?」
坂井「たぶんこの指の第1関節くらいの差」
潮田「何か金メダルいけたんじゃないかなっていう」
坂井「僕もいけたんではないかと思った。腕の長さとかもあると思うんですけど、フェルプスとの差は遠く見えた。負けたかなと思った。」
潮田「銀メダルでうれしいという気持ちと悔しいという気持ちどちらが大きかった?」
坂井「銀メダルとった瞬間はうれしい気持ちが強かったけど、終わってタイムを見ると、0.04秒はあとちょっとだし悔しいっていうのはあった」

怪物フェルプスを追い詰めた坂井選手
次の東京では金メダルを誰もが期待していました

しかし、金メダルを目指す坂井選手がいたのは病院のベットの上。いったい何が…

リオ五輪、あの怪物フェルプスをギリギリまで追い詰めた坂井選手
東京で目指すのはもちろん金メダル…

しかし、去年8月。

坂井選手の姿があったのはプールではなく病院のベットでした。

実は右肩にコブのような腫瘍が見つかり、神経を圧迫し肩に激痛が。
泳ぐことができず、摘出手術を行いました。

水泳競技で大事な夏の時期、自宅のテレビにはこれまで日本代表として戦ってきた仲間が世界で活躍していました。

坂井「正直…なんでしょう…僕も変な感じになる」

早くプールに戻りたいそんな焦りを胸に今できるのはリハビリだけ。

坂井「陸でこうやってチューブをやる時でも最悪でした、まったく力が入らなくて」

今までとはまったく違う感覚に戸惑う坂井選手。

その後、練習を再開。
しかしリオで世界を驚かせた泳ぎとは程遠く結果がでない日々。
思うようにいかない右肩…

坂井「左は痛くないけど、右は痛い」
潮田「ここが手術の痕ですか?」
坂井「そうです、ここから痛くなりだして。だからおよいでいる時に右に傾く」
今年3月アメリカ。
坂井選手はもう一度自分の泳ぎを取り戻すため標高2100mでの高地合宿に参加。
酸素濃度が低く、平地と比べると4分3ともいわれるこの地でのトレーニングは過酷そのもの
心肺機能に負荷をかけて、持久力を強化します。
さらに、水の抵抗を増やし負荷を掛ける器具を使い自らをギリギリまで追い込みます。

1日午前、午後合わせておよそ5時間
10キロ以上の距離を泳ぎ込みます

坂井「練習もだいぶ泳げるようになってきた。手術する前よりは確実に体の動きもよくなっている」

そして、先月行われたオリンピックや世界選手権のメダリストが出場する大会
そこに柔軟性を生かした坂井選手本来の大きな泳ぎがありました
地道な練習が身を結ぶ国際大会2年半ぶりの優勝でした

坂井「久しぶりに優勝して自信がついた、いい経験になった」
潮田「ケガを通じて変わったことは?」
坂井「逆にケガしてよかった。試合の時にビデオを何回も見直して泳ぎを見直すことをやっている。ケガで学んだことは多い」
潮田「東京五輪の目標は?」
坂井「200mバタフライの金メダルはないので金メダルを取れるように精進したい」

ケガを乗り越え、さらなる進化を目指す坂井聖人。
リオで届かなかった0秒04差を取り戻すため 再び、スタート台に立つ。