金色のアスリート

放送内容

2020.1.25 OA

藤井菜々子 競歩

今月13日、那珂川市で開かれた成人式。
このなかに、いま、急成長を遂げて、オリンピック出場が期待されるアスリートがいます!

友人「頑張ってね!」
藤井「ありがとー!頑張ろうね!」
  「2020年勝負の年になるので、しっかりやることやって、東京オリンピックに向けて準備していきたいと思います。」



潮田「わー、久しぶりに来ました!いやーなんか懐かしい、懐かしい感じですけど。あれ?歩いてますよね、歩いてますよね。こんにちは~」

那珂川市出身の藤井菜々子(ふじい・ななこ)選手。

〈発射音〉パーン 
                
女子20キロ競歩で、去年の日本選手権で2位、さらに、世界選手権で7位入賞と競技歴わずか4年で世界に名乗りをあげた競歩界のニューヒロインです!
さて、競歩といえば、気になるのがこの歩き方。

潮田「フォームが独特じゃないですか。競歩の。どういうふうにやられてたんですか?」
藤井「かかとから接地して、こう伸ばす。」
潮田「こっちは曲げていい?」
藤井「こっち曲げて、持ってくる時にまたこなう伸ばす。こう持ってくる足を…そうです、そうです。そういうイメージ」
潮田「(笑い)なんかくるみ割り人形みたい!」

競歩は、陸上競技の中で、唯一、フォームに厳密な規定があります。
まず、片足は、必ず地面についた状態を保つこと。
両足が、同時に地面から離れてはいけません。
そして、前足は、地面と垂直になるまで膝を伸ばさなければなりません。
これに違反すると、審判から注意や警告が出され、3回警告を受けると、たとえゴール間近でも、失格となります。

では、その厳密なフォームで、どのくらい速く歩くのか。
潮田さんと比べてみます。

潮田「よーい、どん!めちゃめちゃ速い速すぎる。ちょっと待って!えー…。ゴール!きっつい!いや、速い 本当に走っている感じですね。」
藤井「そうですね、スピードは。」
潮田「だって身長差10センチくらいあるんですよ。でもなんか本当に幅が、一歩の幅が全然違う、ポンポンって進んでいきますよね。」
藤井「そうですね、リズムよく。」

藤井選手の20キロ競歩の、自己ベストは1時間28分58秒。
時速になおすと、なんと13キロで、自転車に匹敵するスピードです。
去年、世界選手権に初出場ながら7位入賞したことが評価され、日本陸連の年間表彰式「アスレティックス・アワード」で、新人賞を受賞しました。

潮田「藤井選手自分の強さってどこにあるんですか?」 
藤井「骨盤が、結構もともと前傾していて、腰がもうこういう形になってるので、動きがちょっと柔らかい動きが出来るので、それでしっかり前に足が持って行ける。」

速く歩くためには、大きな歩幅で、足の回転を速くすることが求められます。
藤井選手は、骨盤が前に傾いているため、小さな腰の動きで、足を前に運ぶことができます。
ふつうの人より、一歩を速く踏み出せるので、同じ時間で、より多くの歩数で歩けるんです!

そんな競歩の申し子の藤井選手も、素顔は二十歳の女性。

潮田「すごいツメとかきれいにされている。」
藤井「これも結構モチベーションで、靴紐結ぶときも見えるじゃないですか。」
潮田「女の子はそういうの大事ですよね。」
藤井「そうですね。ちょっとしたモチベーションが変わっていくので」

さらに、モチベーションとなっているのが、「プーさん」です!

藤井「3歳のときから好きだったみたいで、写真もいっぱい残っているんですけど、(世界陸上の)ドーハに行く前に(プーさんの)タオルを買って、それを持って行きました。」
潮田「じゃあ、レース中もプーさんのタオルで拭いていたんですか?」
藤井「そうですね。」
潮田「えーかわいい」

FBSでは、高校時代から藤井選手を取材していました!

藤井「いたるところにプーさんがいっぱいある、プーさんだらけ」

「プーさん愛」だけでなく、幼いころから際だっていたのは、「闘争心の強さ」でした。

両親「常に全力疾走みたいな、負けん気が強いからですね。勝ちに行くぞって、昔からありましたね。すべてに対して何でもですけど一生懸命やる。運動会の練習でも、お遊戯でも。だから昔から、ストイックに、一生懸命やる子なんだなと思って。」

走ることが大好きな女の子は、小学3年生のころ、自然と陸上を始めます。

親元を離れ、駅伝の強豪、北九州市立(しりつ)高校に進学するも、1年生の冬、左足を骨折。
リハビリとして、競歩を始めると、いきなり、インターハイの5000メートルで、優勝!
高校生トップに躍り出ます。
ただ…。

藤井「正直、高校2年生の時のインターハイは複雑。走りの方でインターハイ出たかった。」
潮田「素直に喜べない自分もいるけど…?」
藤井「そうですね、ちょっと半々じゃないですけど、気持ちとしては半々だった」

「できれば、駅伝で、全国で走りたかった」
複雑な思いを抱える藤井選手に競歩を続けるよう勧めたのが、陸上部の監督です。

監督「先も見据えたなかで私も育てていった。まず体格がすごくバランスがとれていて、教えなくても自然に、歩型違反にならないような歩き方をしていた。藤井は競歩で、可能性があるんじゃないかと。」

〈応援〉ななこファイト~。
菜々子ちゃ~ん!菜々子ちゃんファイト!

競歩の才能はさらに開花。
高校3年生で、インターハイを連覇し、その年の国体でも優勝。
高校記録を8年ぶりに更新します。

しかし、
競歩の真の過酷さを思い知ることになります。

高校3年生の2月、日本選手権で、これまでの5000メートルから、オリンピック種目の20キロに初めて挑戦。

結果は、まさかの、17位。
トップに10分以上引き離されるという、初めての完敗を喫します。

藤井「ほとんど練習を積まないまま歩いたので途中で辞めたいなって何回も思って、5000メートルとは全然違う。最後足も全然動かなくなるし、きつかったです」

20キロという距離の壁にぶつかった藤井選手。
そこでも、ここから驚異的な進化を遂げます!

20キロ競歩デビュー戦。
1時間43分28秒で、17位と悔しい結果に終わった藤井選手。
世界と戦うために、高校卒業後は実業団に所属。
20キロを戦い抜くために体を鍛え直しました。

藤井「今は競歩に特化しているので、筋肉の動かし方、いかに効率よく歩くかっていう。」  
       
そこで取り組んだのが、フォームの改造です。
高校時代は、腕を大きくまっすぐ振る、ランニング向きだったフォームを、体の中心に向けて腕を振る動きに改造。
上半身と下半身が、体の中心に向けて連動することで、一直線に無駄なく歩けるようになりました。

フォーム改造から、初の20キロレース。

〈発射音〉パーン
              
17位だった前回のレースとは打って変わって、首位を独走。
後半もペースを落とことなく、歩き抜きます。
見事、優勝し、1時間33分27秒と、前回のタイムより10分も縮めました。

藤井「タイムは1時間33分前後でクリアしたけれど、自分のなかでは、もうちょっといけるかなと思っていたけど、そこがうまくいかなかったので。(次は)1時間30分はベースに考えて、その前後のタイムは出したいなと。」

その宣言通り、4か月後、去年2月の日本選手権では、1間29分55秒と、さらに3分半もタイムを更新。

そして、去年9月、初めての世界選手権で、いきなり7位に入賞!
わずか5度目の20キロレースで、世界レベルに。
驚異的な進化を見せつけました。

藤井「東京オリンピックにつながるような、経験で歩ければいいと思っていて、少しずつ小さな目標をクリアして、今ここまできたので、それが大きかったかなと。」

来月16日の日本選手権で優勝すれば、東京オリンピック代表が内定。
夢への一歩。

藤井「日本記録を超えないと世界では戦えないと、現状ではなっているので、目標ではなく、それは必然的な通過点ではないですけど、そこはもうそういうふうに捉えているので、東京オリンピックもし決まって、そこで自分が、感謝の気持ちを表せる歩きができたらいいなと思っていて、その先のパリとかロサンゼルスにつながる歩きができたらいいなとおもっている。」