金色のアスリート

放送内容

2020.4.25 OA

永田しおり ハンドボール

今年の夏開催されるはずだった、東京オリンピックは、新型コロナウイルスの影響で一年程度の延期に。
そんな中・・・

「準備期間が長くなったので、よりパワーアップできると思います。」

きたる”そのとき”にむけ、さらなる進化を遂げようとしているのは、福岡市出身のハンドボール選手、永田しおり。
走る、跳ぶ、投げる。 スポーツの三大要素すべてを駆使する、“フィールドの格闘技”で、最初で最後のオリンピックに挑む、32歳の思いと、驚きのテクニックに迫る。

潮田「熊本県山鹿市にきています。こちらの体育館で永田選手が練習しているそうなので、早速行ってみます。」
(扉開ける)
潮田「こんにちは。きょうはよろしくお願いします。(握手)身長何センチですか?」
永田「171センチです。中学一年からこの身長です」

福岡市出身の永田しおりは、現在、熊本のオムロンハンドボール部に所属。
すでに開催国枠でオリンピック出場を決めている女子日本代表・おりひめジャパンの中心選手だ。
ハンドボールは、1チーム7人。
ゴールキーパー1人と、6人のコートプレーヤーで、前後半30分を戦う。
永田のポジションはポスト。
守備では、ゴール前でプレッシャーをかけ、体を張ってシュートを止めると・・・
攻撃では相手ディフェンスを抑え、味方のシュートを援護するなど、頭と体を使う、攻守の要だ。
永田はこのポジションで、オリンピックより格上の大会とも言われている、世界選手権に5大会連続出場。
100試合以上の国際試合を戦ってきた。
まずはそのシュートを潮田さんが体感!

潮田「おぉ~わっ!こ~わっ。いやぁ~すごいですね。」
永田「実は本当はシュートを決めるためにわざと顔の横とかを狙っているんですよ」
潮田「そうなんですか。怖いからってことですか・・・あと又の下!そっか、そこは駆け引きになってわざとそこを狙って」
永田「どうしてもキーパーはよけるので実際に世界選手権でも、キーパーの体すれすれを狙ったシュートを決めるシーンも。」

一方ディフェンス面では、「ファウルの魔術師」の異名を持つ永田。
一体どういうことなのか?
ハンドボールには、2つのファウルがある。
このように、相手に怪我をさせる可能性のあるファウルは、“危険”と判断され、サッカーで言うPKのように、ゴールより7mの位置で、キーパーと1対1のシュートが与えられる。
もう一つはこのプレー。
同じ守備でも正面から抑えると、“軽度”のファウルとなり、ゴールより9Mのラインからフリースロー。
試合は仕切り直しとなる。

永田は、この軽度のファウルで、相手の攻撃のリズムを崩すスペシャリストなのだ。
そこには、どんなテクニックがあるのか、実演してもらうことに。
まずは危険なファウルを説明してもらう。

(ファウルシーン)
永田「シュートを打つときに押したりしたら危険なファウルなので、サッカーで言うPKみたいなのが与えられます。私はイエローカードか2分間退場になります。でも私は危険なファウルをしないために、シュートを打つ前にしっかり当たってボールをつぶす。」

シューターの前に素早く入り体を寄せて抱え込む。
そうすれば、相手が倒れないため、軽度なファウルと判断されるのだ。
このテクニックに、元オリンピアン・潮田さんが挑むと・・・

潮田「いきます!」
(3回とびこむ)
潮田「ぐわ~~~~」
潮田「倒れたいけど、倒れないですね。」

相手の攻撃を阻み、試合の流れを止める。
練習でも、チームメイトを相手に、ひたすら受け続ける姿が見られた。

その永田。中学時代はバレーボール部だった。
ハンドボールに転向したのには、ある“夢”が大きく関係していた。

永田「オリンピックに出たいっていう夢があったんですよ。小さいときから。バレーボールよりハンドボールは人口が少ないし、いけるんじゃないかって。」

強豪・福岡女子商業高校でハンドボールを始めると、すぐにその才能は開花。
三年の時にはキャプテンを務め、初の九州大会ベスト4に導いた。
恩師の澤井監督は、最後の試合で見せた、あるプレーに、彼女のキャプテンシーを感じた。

澤井監督「強気な本人が。同級生にラストパスを出して同級生の方が4連続得点をして。自分が自分がというようなことではなくて、周りを見てパスを出来るというようなことが印象に残っていますね。」

潮田「接触のプレー、最初は怖かった?」
永田「最初は怖いし痛くて当たるときに顔を背けていたけど今は当たって止めることが、いいファウルだったらゲームストップとかフリースローをいかに何個獲るかを楽しみながらやっています。」

高校卒業後、日本代表が多く所属するオムロンへ。
仕事もしながら、ハンドボールに打ち込んできた。
そんな永田の素顔は・・・

後輩「大雑把。大胆です。大胆。」
D「どんなときに大胆?」
後輩「すべてです。」

この寮で暮らし、15年。
今ではチーム最年長の32歳。
部屋を見せてもらうと、思い出の品の数々が・・・。

D「これは?」
永田「ロンドンオリンピック(予選)のときに(代表)選手みんなでその人に対してメッセージを書こうってなって」
D「これ見ると当時のことを思い出しますか?」
永田「そうですね。がんばらないとなって思います」

初めておりひめジャパンに選ばれたのは、2011年、22歳のとき。
しかしロンドンオリンピック出場権がかかった、世界選手権では、試合終了間際に逆転負け。
さらにリオは、あと一勝というところで一歩届かず。
2大会連続で、夢の舞台への切符を逃した。

永田「悔しくてそこでやめようって。初めてハンドボールをやめようと思ったのが、リオオリンピック後でした。」
潮田「そこからまたオリンピックを目指そうと思ったのは?」
永田「ロンドン(予選)で一緒に戦った選手から、「東京オリンピックだから続けてよ。私はもう引退してできないから」といわれて。確かに私だったらチャンスがあるし、みんなの思いをもらってパワーをもらってチャレンジしようかなと思って、続けようと思いました。」

仲間の思いを胸に、再びオリンピックを目指した。
そして去年の世界選手権で本領発揮!

去年12月、熊本で開催された世界選手権。
福岡市出身の永田しおりは、日本代表・おりひめジャパンのキャプテンとして出場。
予選ラウンドでは、序盤から、積極的なディフェンスを仕掛けると・・・
腕にボールを引っかけるという技ありシュートを決め、チームを牽引。
予選ラウンドを順調に勝ち進んだ。
決勝ラウンドでは、この大会無敗のスペインと対戦。

高身長の相手には、2人で守り、失点を防ぐと・・・

さらに前半19分にはこのプレー。
相手がパスするのを予測し、すかさずホールド。
軽度なファウルで流れを止め、「ファウルの魔術師」の真骨頂を見せつける。

その後両チーム点の取り合いで、一進一退のまま前半終了。
4点を追う後半には、細かいパスから、最後は永田がゴール!

その後も、日本代表は攻めの姿勢をみせ続けるも、このまま試合は終了。
それでもおりひめジャパンはこの大会、過去最高の10位という結果を残した。
しかし・・・

永田「過去最高10位だったんですけど、私たちはメダル獲得を目指していたので正直悔しい気持ちの方が多くて」
潮田「具体的な課題は?」
永田「ディフェンスなんですけど、大きい相手に対してどうしても守れないっていうのが。」

今年1月、永田は課題克服のため、ハンドボールの本場・デンマークのプロチームに、単身武者修行。レベルアップを図った。
来年は、33歳。
心と体を奮い立たせ、最初で最後のオリンピックへ、さらなる進化を遂げようとしている。

潮田「東京五輪が延期になってどうですか今の心境は?」
永田「プラスに考えて、準備期間が長くなったので、よりパワーアップできるかなと思っています。 30過ぎているので年齢が体力的には心配があるんですけど私は東京オリンピックが集大成として考えていたので、まだまだハンドボールができるなという嬉しさもあります。」
潮田「改めてオリンピックの目標」
永田「世界選手権でメダルを獲れなかったので、メダルを獲得したいというのが目標です。」
潮田「何色の?」
永田「そこは金メダルです!」

「オリンピックに出たい」その夢を、叶えるときが来た。
金色のメダルを、つかみとれ。